ドラムは心臓が刻む音だろ? それで、ベースが頭脳(ブレイン)だ。
このふたつが揃って完璧になる。ハートと思考がひとつの世界を作り出すんだ。 LEE "SCRATCH"PERRY―

Jul 19, 2009

ゆれる

西川美和監督の『ゆれる』を見た。

心の奥底からゆさぶられるようだった。




























父の跡を継ぎ、地元でガソリンスタンドを営む真面目な兄。
東京でカメラマンとして成功をおさめた弟。
母の命日に久しぶりに帰京した弟は、兄に誘われ、
ともに好意を持つ幼なじみの女性と渓谷に出かける。
兄と女性が古い吊り橋を渡るとき、女性が川に転落。
兄は、女性を殺害した容疑者として逮捕される。

物語は、兄が女性を突き落としたのか、否かを軸に進むが、
描かれるのは、事件(事故)の真相というより、
嫉妬、信頼、甘え、おごり……といった兄弟の感情だ。
その人間性がむき出しになるのを目の当たりにし、
見ているこちらの心までヒリヒリとしてくる。

自らを滅し、我慢に我慢を重ねてきた地味な兄と
やりたいように生きてきた華やかな弟の
わかりやすい対比は、序盤のみ。
初めは「未だ与えられない者」である兄が弟をうらやむ。
しかし「与えられた者」であるはずの弟には、
達成感などは皆無で、むなしさが漂う。
クールなようでいて、
じつは着実な兄に、しがみつくほどに
頼り切った信頼を寄せている。

結局、人はだれもが「ないものねだり」なんだと思う。
兄と弟、どちらかではなく、
ふたりから自分に重なる部分が見えてくる。

あと、兄の裁判での、
兄弟の叔父である弁護士と
検察のディベートも印象的だ。
被告人である兄への彼らの問いかけは、
罪と救いの間で、
加害者の苦悩と被害者の喪失の間で
ゆれ動いていた。

この映画が描いた、感情の触れ幅は
人間の「業」と言い換えてもいいかもしれない。
それくらい深いものを感じた。
また、自分の浅はかさを思い知った。

この作品を作り上げたのが同世代だという事実。
いや〜、大変なもんですよ。
西川美和さんって、どんな人なんでしょ?

他の作品はもちろん、
直木賞候補にもなった小説も読んでみたい。

2 comments:

  1. 俺も先月、これ見たよ。面白いというよりも不思議な感じやった。なんか奇妙な兄弟関係だね。
    どの人間関係も不安定やし、見てるこっちも不安定になる。

    ReplyDelete
  2. 不安定、たしかに。
    「ゆれる」だしね。
    一番、わからないのは吊橋で起こった出来事だしな。
    結局、弟が見たものは妄想っぽいニュアンスもあったし。
    オレは好みだったよ。

    ReplyDelete

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